劇画オバQ

うさぎいぬ

2025年01月01日 12:00


藤子・F・不二雄氏の作品に「劇画オバQ」というのがありました。「オバケのQ太郎」のエピローグ的な読切短編で、「ビッグコミック」(小学館)1973年2月25日号に掲載されました。

ストーリーは、大人になった正ちゃんが大人になったハカセと出会い、脱サラして新事業を立ち上げないかと誘われるところから始まります。ある人物(と云うよりもオバケ)から「大原正太の家は?」と声をかけた人物こそ正ちゃんで、まさに15年ぶりの再会でした。

この間にドロンパはアメリカに帰り、ドロンパと住んでいたオヤジの神成さんは亡くなり、Qちゃんのガールフレンド?だったU子はオランダに柔道修行に行っている事を正ちゃんに聞かされました。

正ちゃんは既に結婚していましたが相手は友達のよっちゃんではありません(よっちゃんも結婚していましたが、結婚相手は木佐でもゴジラでもハカセでもありません)。かと言って「ドラえもん」でドラえもんが来なかった時の、のび太の結婚相手が(ピー)ブでブ(ピー)のジャイ子のような女の子ではありません。まあ、のび太の結婚相手がいじめっ子のジャイアンの妹のジャイ子だと、のび太が結婚詐欺に遭ったと見るのが普通でしょう

Qちゃんは15年前と同じようにご飯を20杯も平らげ、寝るときも大きないびきを立てるため、奥さんから煙たがれ、寝室で正ちゃんに「ねえ、Qちゃんはいつ帰るのとボヤキに近い会話を聞いて、流石にQちゃんは堪え、翌日、Qちゃんはご飯をお代わりを遠慮してしまいました。

数日後、Qちゃんは住み慣れた昔の街を散策したが、生まれた場所の雑木林はゴルフ場(打ちっぱなしのゴルフセンターかな)に変わり、実家はマンションに変わるなど様変わりしていました。パパは定年退職して故郷に帰郷、正ちゃんの兄は転勤して北海道に引っ越した事も明らかになりました。

そんな時に大柄の男が声をかけていて、振り返ったらガキ大将のゴジラだと一発でQちゃんは分かりました。ゴジラは家業の乾物屋を引き継ぎ、店主として立派に暮らしていました。ゴジラはQちゃんとの再会を喜び、ゴジラの家で同窓会をやろうと誘い、正ちゃん、ゴジラ、木佐、よっちゃんが集まり、ハカセについて様々なウワサで話が盛り上がりました。

途中からハカセがやってきて、子供の頃に無人島に渡って“独立国”を立ち上げた時に掲げた「Q]と書かれた旗を取り出し、昔はそんな事もあったなあ…と話が盛り上がり、正ちゃんが「(子供の頃は)いろんな夢を持ってたっけな…それが大人になるにつれて一つ、また一つ消えて…」とボヤくと、ハカセが「そこだ」とテーブルを叩いて叫び、「なぜ消さなきゃならないんだよ。大人になったからって…ぼくはいやだ!!自分の可能性を限界まで試したいんだ !!そのためには、たとえ失敗したって後悔しないぞ!」と言うと、ゴジラが「いいこと言うぞ!このハゲ!」とハカセの頭を叩き、正ちゃんも「僕は卑怯だった。君の計画に参加させてくれ!」とハカセの計画に賛同。正ちゃんの奥さんの事を気にするハカセに「つべこべ言わせない!黙ってついてこい!これでおしまいさ!」ゴジラと木佐にビールを(無理やり)飲まされたQちゃんも「僕も入れて入れて!」と飛び跳ね、木佐もよっちゃんも「人生かけるぞ!」とハカセに賛同し、「おれたちゃ永遠の子どもだ!この旗に集え、同士よ!」とヒートアップしました。

帰り際に酒の勢いで「ニョーボがなんだ!会社がなんだ!」と叫び続け帰宅した正ちゃんは、翌朝二日酔いで目を覚ます。Qちゃんがやってきて「昨夜の決心、奥さんに話したと質問するが正ちゃんはすっかり忘れてしまったようだが、Qちゃんに促され奥さんに昨夜の決意を話そうとすると、奥さんも「私も大事な話がある」と切り返しました。

奥さんの方から話を聞くと、正ちゃんは「ほんと」と驚き、そしてQちゃんに「聞いたかQちゃん、ぼくに子どもができるんだと大喜び。奥さんも「正ちゃんにも張り切ってもらわなきゃ」と声を掛けると「張り切るとも」と元気よく出社して行きました。

その姿を見たQちゃんは「そうか…正ちゃんに子どもがね…」とつぶやき、「ということは、正ちゃんはもう子どもじゃないって事だな…な…」とつぶやき、Qちゃんはオバケの国に戻る時にハカセが昨晩に取り出した「Q」と書かれた旗が空に舞い上がったのでした。

そうか…奥さんの妊娠を聞かされた時に正ちゃんは「ボクの夢は仕事で頑張って、奥さんと生まれてくる子どもを幸せにすること」と気付いたのでしょう。ストーリーでは描かれていませんが、正ちゃんはハカセに理由を話して丁寧に断ったのでしょう。


この漫画は「異色短編シリーズ」と銘打った単行本に掲載されていました。他の作品では主人公の乗ったロケットが事故である星に墜落事故を起こし、ウシに食べられようとする出会った少女を助けようとする「ミノタウロスの皿」、主人公の少年が未来の自分(オヤジ)に出会い、未来の自分たちが過去の自分(子ども)を連れて来て、未来の自分たちの醜い口論を見た過去の自分が自死する「自分会議」などの作品がありました。気になる方はブックオフとか古本屋などで探して見てください(笑)